チケット転売業界に図らずも一石を投じる結果となってしまったチケットキャンプですが、チケットキャンプだけがいけなかったのでしょうか?
実は、ちょっと考えれば誰でも行き着くのですが、チケットキャンプがそんなに悪いことをしていたかどうかというと、そうでもなかったりします。
ただ、わきまえていなかったからこそ摘発されてしまった。そんな感覚を得ています。では何をわきまえていなかったのでしょうか?何をしたのでしょうか?
有名なジャニーズや宝塚との関係性はどんな感覚なのでしょうか?
それぞれの内容に、少しずつ掘り下げていきたいと思います。
目次
チケットキャンプが立件された本当の理由と「裏」
チケットを転売して収入を得ている人からすると、チケットキャンプのサービスが利用できなくなったのは相当な痛手だったと思います。
なにせ、チケットキャンプがあることでチケット1枚当たりの単価が5~10倍にまで跳ね上がっていたわけですからね。
それがあるのと無いのとでは、大きな差がありますよね。
では、本当は恐ろしいチケットキャンプが立件された裏にある理由と事情は何があるのでしょうか?
商標法違反→不正競争防止法→チケット不正転売禁止法
実は後から出てきたのがチケット不正転売禁止法です。
「いやいや、チケットを転売していてチケットキャンプが捕まったのだから、チケット不正転売禁止法がメインでしょう」
と言いたいかもしれませんが、実は順序が逆です。
フンザが立件されたのが2017年12月。
チケット不正転売禁止方が制定されたのが2019年4月。
順序が逆ですよね?
ようするにそういうことです。
ジャニーズや宝塚歌劇団の商標権を侵害していて、かつ「ジャニーズ」や「宝塚」の名前を使ってサービスを販売していたことで不正競争行為とみなされたということです。
一般的に出回っている情報、というか、「チケットを高額で販売していたのだからチケット不正転売禁止法だろう」という認識が、実は逆だったのです。
とはいえ、チケット転売をしていたことが不問かというとそういうわけでもありません。
チケットを高額で売ることが詐欺行為と認識されるかどうか
チケットキャンプの一連の動きを見ていると、「チケットを高額で売ることが詐欺である」という定義を作るための、事前準備のための商標権侵害とか、不正競争行為による立件なのかなと思えるほどです。
法律が新たに制定されるまでには時間がかかりますから、そうでもしておかないとチケットを高額転売され続けてしまいますから、取り締まれなかったのかもしれませんね。
チケットを高額転売されると困る業界
チケットを高額転売されると困る業界は限られています。
主に興行界がそうですね。
チケットを買ってアーティストに会いに来てくれるお客さんが、チケットを買うだけでおサイフの中身が空っぽになってしまい、グッズや次の公園に来てくれなくなってしまう。
本当に困っていたのだと思います。
業績がみるみる下がるわけですからね。
どんな経緯かはわかりませんが、チケットを販売する業界において、身分証明がないとチケットだけ持っていても入場できないライブが増えました。
察するに、高額転売されたチケットで購入者と所持者が違うことが多くなり、それを防止するために考えられたものだと思われます。なにより、
リスクをとって正式に代理店として販売権利を貰った企業が、リスクも取らずにチケットを高額転売しておいて、しかもお客さんを根こそぎ持っていかれては、本当に困ります。
チケットキャンプのようなやり方をされては、同業者としては本当に迷惑だったと思います。
とはいえ、チケットの高額転売自体が完全になくなったというわけではありません。
ネットダフ屋は減ったが撲滅には至らず
こちらのTENBAI HACKでもご紹介していますが、チケット流通センターのようなネットでチケットを転売する機関がなくなっているわけではありません。
今時点で存在感を放っている転売サイトをいくつか紹介します。
- チケットストリート
- チケット流通センター
- チケジャム
この当たりはかなりまだ取り扱っています。
名目上は「転売目的のユーザーは利用資格を剥奪している」と謳っていますが、果たして転売目的のユーザーをどうやって探し出しているのでしょうか?
疑問が残るところです。
話によると、チケット2次流通の国内規模は17年には900億円ほどありましたが、18年には400億円にまで減っているそうです。
チケットキャンプのようなネットダフ屋で「高額取引をしていたところ」が淘汰されたことで、多くのニーズは失われたはずですが、まだ個人対個人での店売ニーズは残っています。
しかも、これまで高額転売をしていたユーザーたちが、チケットストリートやチケット流通センターに流れてきている可能性も高く、個人名義で入ってきているので迂闊に取り締まれない現状があるようです。
チケットの高額転売への対抗策
CD販売での利益が臨めない中でライブはアーティストや関係各社にとって、この上ない重要な収入源です。
チケットを高額でしか買えない世界になってしまえば、もちろんグッズやライブのリピートをしてくれなくなってしまいますよね。
そこでチケットの高額転売への対抗策を打ち出した機関があります。
それがチケットを定価で転売できる公式サイト「チケトレ」です。
チケトレをバックアップする企業は以下の4つです。
- 日本音楽制作者連盟
- 日本音楽事業者協会
- ACPC
- コンピュータ・チケッティング協議会
以上4社がバックアップ企業となっています。
ただし、チケトレを始めるためには注意すべきところがあります。
- 運転免許証やパスポートなどの身分証明証を提示義務
- 出品者に10%+380円の手数料
- 購入者に13%の手数料
なので、いくらチケットを転売できるといっても、そもそも手数料で赤字になることは確実です。
高額転売がされない安心感を裏目に、サイトの利用料で手数料がかかってしまうことは、結構大きな痛手となると思います。
結局高額転売がないというだけで、定価でチケットを手に入れることは難しくなってくるわけですね。
ユーザーは結局SNSやオークションに流れていく
この流れは、もう揺るがない法則のようになっています。
仮に5,000円のチケットをチケトレで買おうとしても、手数料で650円かかる。ということは、プラス送料がかかるので、最終的には6,000円を超える可能性もありますね。
しかし、こういう世情になってしまった以上、サービス提供の厳格化は否めないと思います。
安室奈美恵の引退前のラストツアーの事例
実はそんなチケット転売市場について、高額転売ゼロを実現したのが、安室奈美恵の「namie amuro Final Tour 2018 ~Finally~」です。
チケットはすべてチケットボードというサイトで販売し、購入時にかなりの制約を購入者に課しています。
購入者への具体的な施作
- 購入時に行く人全員の名義を登録義務
- 行く人の変更は不可
- QRコードを表示できるスマホか携帯電話
- 運転免許証かパスポートなどの公的証明書を必須
逆に言うと、ここまでしないと高額転売は防げないということです。
また、本人確認を厳格化すれば、ファンにしわ寄せがいくのは確実です。
身分証明証を忘れたという理由で入場できなかった人も実際いたそうです。
次に問題になったのが設営費用です。
確認事項が多くなる=スタッフの増員が必須であることに加え、QRコードの読み取り機械の増設は必須です。
安室奈美恵のラストライブというネームバリューもあったからこそ実現できた事例ですが、他のライブで同じ様にできるかというと、そうでもなさそうです。
高額転売の防止施作の最上級例のような事例でしたが、もしかしたら今後はこのような内容が増える可能性もありそうですね。
主催者VSチケット転売業者の行く末
完全に終わりが見えませんが、一筋の光明が刺しましたね。
安室奈美恵のラストライブでの事例はかなり極端に移りましたが、逆に言えば「ここまでされれば高額転売もできない」ということの実例となりました。
あとは主催者側がどこまで実現できるかというところになります。
利益を得るためのライブにするのか、またはファンに自分を知ってもらうためのライブにするのか。
そのどちらに方向性が変わってくるかで結果も変わってくると思います。
マーケティング業界のフロントエンドかバックエンドか、そんな感覚に似ていますね。
むしろ個人的には、
「ここまで審査をくぐってきて、念願の安室奈美恵のラストライブに参戦できたんだ、きっと素晴らしいものに違いない!」
という達成感にもにた満足感が待っていると思います。
興行主催側には、ぜひそんなファン心理を汲み取ってもらって、売れるかどうかわからないからと攻めあぐねるようなことはしないように取り組んでいただきたいと思います。
チケトレがどんなに公正公平謳っていても、チケット購入時に手数料を取られては、ユーザーからすると大差ありません。
であれば、ユーザーが求めるのは、安室奈美恵のライブのような例です。
個人情報を扱うのでそれくらい厳しくてもいいと思います。
高額転売に怯えずに、安室奈美恵の事例を前向きに捉えていただきたいと思います。
それでは今日は以上となります。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。